無題

完璧な日なんて滅多にない。
大好きな人達を集めて企画した飲み会も、大好きなあの人の予定が合わなかったり、大好きなあの子の機嫌を損ねてしまったりする。それでも設定したその日を完璧にするために、飲み会が開始すれば、欠員のあの人やドス黒い感情は脳の隅に押しやられることになる。
その場にいる人に、自分を含め罪なんて存在しない。そこにあるのは今その瞬間を楽しむというそれだけであり、それ以外の概念が介在していい理由などない。だから時間がある限り酒を頼み、グラスを叩きつけ、喋る。そうするとその場に居る人間は皆笑顔になる。その時間は間違いなく幸せなはずだ。
家に帰ると、圧倒的な虚無感に襲われる。あんなに楽しかったのに、あんなに楽しかった時間はもう目の前にない。僕のくだらない話を聞いて笑ってくれる仲間も、なんとなく時間を濁してくれる酒も煙草も存在しない。余りに憂鬱なのでパンツも脱いで布団に入り込んで、さっさとオナニーして寝る。それが一番いい。
ふと、眠りにつく前に、今日これなかった人と、いつか傷つけてしまったあの子を思い出した。彼らは、寝る前に僕のような孤独を感じているのだろうか。人は皆孤独なんだろうか。例えば孤独だとしたら、電話でもして慰め、慰められ、ということが出来るのだろうか。
「〜だろうか」と浮かぶことは大抵実践しないまま終わる。それはきっと何処かで、妄想のままでいい、とある種の諦観のような枠に収まった思考だからと思う。夢は夢でもいい。
瞼を開けると8時半を越えていた。